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東京地方裁判所 昭和44年(手ワ)4252号 判決

原告 安藤花枝

訴訟代理人弁護士 今村甲一

被告 株式会社東京大証

代表者代表取締役 水野繁彦

訴訟代理人弁護士 樋渡洋三

主文

被告は原告に対し金八六六万二、四一九円およびこれに対する昭和四二年四月二六日から右完済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実

一、請求の趣旨

主文同旨の判決ならびに仮執行の宣言を求める。

二、請求の原因

原告は被告に対し手形割引の方法により次のとおり金員を貸し渡した。

金額(円)     貸付の日昭和年月日 弁済期昭和年月日

1  四七五、〇九〇 四一・八・一三   四一・一二・六

2  四七三、九一五 四一・八・一〇   四一・一二・六

3  四七三、九一五 四一・八・一〇   四一・一二・六

4  四六六、八六五 四一・九・二七   四二・二・一一

5  四六六、六三〇 四一・九・二七   四二・二・一二

6  四六六、六三〇 四一・九・二七   四二・二・一二

7  四八一、五一〇 四一・一一・二二  四二・二・一四

8  四八一、五一〇 四一・一一・二二  四二・二・一三

9  九六〇、四四〇 四一・一一・二二  四二・二・二〇

10  二八五、九〇〇 四一・八・二七   四一・一二・五

11  二八六、〇四一 四一・八・二七   四一・一二・五

12  二八六、〇四一 四一・八・二七   四一・一二・五

13  二八九、四二五 四一・九・一四   四一・一二・五

14  二八七、〇二八 四一・九・一二   四一・一二・一五

15  二七九、五五五 四一・八・二七   四二・一・一五

16  二七六、四五三 四一・八・二七   四二・二・九

17  四七、七六八  四一・一一・二〇  四二・二・二五

18  九五、九五八  四一・九・一四   四一・一二・一五

19  九二、二九二  四一・九・一二   四二・二・二五

20  九二、七一五  四一・九・二七   四二・二・二五

21  四六七、五七〇 四一・一〇・一二  四二・三・三

22  二七九、八七六 四一・一一・二二  四二・四・二五

23  三七三、一六八 四一・一一・二〇  四二・四・二五

24  九五、九五八  四一・九・一九   四一・一二・一四

25  一九一、八二二 四一・九・二〇   四一・一二・一六

26  九五、六二九  四一・一〇・一三  四一・一二・二二

27  九二、七一五  四一・一〇・一三  四二・三・一五

計八、六六二、四一九

よって原告は被告に対し右貸金元金合計額およびこれに対する最終弁済期の翌日である昭和四二年四月二六日から右完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

三、請求の趣旨に対する答弁

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求める。

四、請求の原因に対する答弁

被告が原告から原告主張の各金員をそれぞれ原告主張の日に交付を受けたことは認める。しかし、右各金員はこれとひきかえに被告が原告に交付した手形の割引金として受領したもので、右取引は手形の売買であって被告は消費貸借上の債務を負うものではない。

理由

原告主張の各金員が、それぞれ原告主張の日に原告から被告に交付されたことは当事者間に争いがない。原告はこれを貸金と主張し、被告は手形売買代金と主張するのでこの点について判断する。≪証拠省略≫を総合すると、被告は手形割引を主体とする金融業を営む会社であり、原告は一般の家庭の主婦であること、原告は被告の営業社員から銀行預金よりも有利な利殖方法として勧誘され、昭和三九年頃から被告との取引を始めたこと、その取引は被告が第三者振出被告裏書の約束手形を原告に交付し、原告はこれとひきかえに手形の額面金額から割引料を控除した金額を被告に交付し、満期には被告から額面金額の支払を受ける約定のもとに行なわれたこと、実際には満期の頃に被告の営業社員が原告方を訪問しさしあたり現金化の必要がなければ、さらに先の日を満期とする他の手形に切り替えることを勧誘し、原告が支払を受けるべき従前の手形金は新手形の割引金に充当するという方法で取引を増加しつつ継続してきたこと、その間原告としては満期には最終裏書人である被告から支払を受けられるものと考え、各手形の振出人の信用を調査したことは全くなく、被告の倒産後被告の営業社員から一応手形に不渡の符箋をつけた方がよいと教えられるまでは振出人に対し支払のため手形を支払場所に呈示したことも全くなかったこと、割引率もしたがって振出人の信用に応じて定めるのではなく、割引依頼人である被告が一方的に一率に定めた日歩四・七銭または四・三銭等の割合によっていたこと、以上のような事実が認められる。

右のような事実によれば、右の取引は、被告から原告に金員の受領と引換に手形とともに交付された計算書には「割引料」という名称は用いられてはいるが、金融機関が手形を割引くという場合とは趣を異にし、手形自体の価値を目的としてこれを売買する趣旨ではなく、交付された金員は割引依頼人である被告が、手形の満期にこれを返還する趣旨の取引すなわち消費貸借であって手形の交付はその債権を確保する方法に過ぎないと解すべきである。

右各消費貸借の弁済期にあたる前記の趣旨で授受された各手形の満期がいずれも原告主張のとおりであることは≪証拠省略≫によりこれを認めることができる。

以上の認定を左右すべき証拠はない。

右認定事実によれば原告の本訴請求は正当であるからこれを認容し、民訴法八九条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 白石悦穂)

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